プノンペン日本人学校 校長 三浦 信宏さん
– プノンペン日本人学校の校舎をご覧になってどういう印象を持たれましたか?
設立準備委員会の皆様のご尽力により、素晴らしい校舎をつくっていただいたことに感謝しています。海外日本人学校の新設校に関わるのは、中国の深セン日本人学校についで2校目ですが、各教室、特別教室等、中国のときよりも広く立派です。特に広い屋内運動場があることは、元気いっぱいの子ども達にとって何よりうれしいことだと思います。
日本でも2校の新設校に関わったことがあり、日本と比べると教材については、まだ十分とは言えませんが、今あるものを工夫して最大の効果を出していきたいと思います。日本人学校のすばらしさをご理解いただき、児童生徒数が増えれば、予算的な余裕もでき、さらによい環境をつくっていけると考えています。「環境が人をつくる」と言いますが、日本人学校のスタートにあたり、とてもよい環境をつくっていただけたと思います。
– 日本から派遣される教員の方々はどのような方ですか?
日本各地から8名の教員と現地から4名の教員の12名体制で学校創りに取り組んでいきます。どの教員も新しくできるプノンペン日本人学校創りに意欲をもっている優秀な教員ばかりです。立派な校舎に負けない楽しいソフトを創っていきたいと思います。
– どのような教育目標を掲げますか?
学校教育目標は、「ともに みがき はばたく子」です。教育目標は学校運営の指針となる目標です。全ての教育活動は、この目標達成のためにあります。ですから、大人はもちろん子ども達も言える、子ども達がわかる言葉にしたいと考え設定しました。
少し具体的に言うと、『ともに』は、共生の大切さを表しています。学年・学校の仲間、プノンペンの人達と、そして世界の人やことと共生する。国際社会に生きる子どもになることです。『みがき』は、≪磨き・研き≫という字になりますが、今あるものをより良くしていこうとすることです。『はばたく』とは、自己実現のことです。磨き高めたもので自己実現することが大切です。
目指す学校像は、『知的遊園地』です。遊園地は大人も子どももワクワクドキドキして大好きです。学校も遊園地のようにワクワクドキドキする場所にしていきたいです。ただし、学校は知的なものがなければいけません。知的好奇心を刺激する、そんな知的遊園地を目指しています。仲間とともに、自分をみがき、そして大きく力強くはばたくことができる。そんなプノンペン日本人学校にしていきたいです。
− 日本の学校に転入が可能ですが、現代日本とのギャップは生まれないでしょうか?
海外と日本、当然ギャップ(差)はあります。実は日本国内でも地域によって、学校によって差はあります。それは、学校の文化・子ども達の文化は、子ども達とそれに関わる人々でつくっていくものですから、当然差は出てきます。
知識のみの教育から、自分が獲得した知識をどういかせるか、考える力を育てることが大切です。困難に当たった時どう乗り越えるか、それが今教育に求められている『生きる力』です。生きる力が育てば、日本でも、他の国でもどこでもやっていけます。子ども達が楽しいと思える学校を創っていけば、日本に戻っても十分適応できます。
− 海外で日本の教育を受けられることのメリットについてお聞かせください。
日本人学校の使命は、海外でも日本国内と同等の教育を提供することですが、実際はそれ以上のことができます。たとえば、英語や他言語の習得は、日本より充実してできます。また、現状では1クラスの人数が少ない少人数学習を進めることができます。小学部では、部分的な教科担任制を実施する予定です。このことで、一人の先生ではなく、多くの先生に接することができ、多くの先生の目で見てもらえることができます。日本の学校では難しく、インターナショナルスクールでもできない、日本人学校ならではのよさを推し進めていきたいと考えています。
その一つとして、異学年活動の導入を考えています。小1から中3までの年齢差9歳の差がある活動集団を編成し、一緒に掃除をしたり、お弁当を食べたり、遊んだりします。普段の学年は、年齢により横割りですが、異学年の縦割り活動を充実させることで、上学年は下学年のことを考え、下学年は上学年の良さを学び、共に思いやる気持ちが生まれてきます。海外にいても、日本以上の心の教育ができるのは、大きなメリットだと思います。
皆様の思いが結集してできたプノンペン日本人学校です。子ども達はもちろん、在留邦人の皆様、カンボジア政府の皆様にも「日本人学校ができて良かった」と言っていただけるように、魅力があり、安心して通える学校を創っていきたいと思います。ここで育つ子ども達が、日本とカンボジア、そして世界の懸け橋になってくれると信じています。