//目に見えぬ「日本らしさ」を土産に

目に見えぬ「日本らしさ」を土産に

 先日、日本からの帰りで航空会社のチェックインカウンターで並んでいると、いつもより人が多かった。風邪が治りかけで咳がまだ出る状態だったので隣の席の方に迷惑をかけるのも悪いからと、席をアッグレードしようと空席の状況を尋ねたら、満席を告げられた。マスクの用意もしなければと思っていると、様子を察した係の方が少し考えながら、エコノミークラスでやりくりをしてみるのでと端末を叩きながら席を確保してくれた。その場では何も言われなかったが、搭乗してみると隣の席が空いていてビックリした。それだけでなく、トランジット後も同じように隣が空席だったのだから、とても偶然とは思えない。当然、席が無ければ無理な話だが、少ない空席の中から最適な席を確保してくれた心遣いに非常に感謝したと同時に、改めて日本人の気配りや優しさを感じた。カンボジアへの帰路は、暖かい気持ちで過ごす事ができた。その時に対応してくださった成田空港タイ航空のチェックインカウンターの方に感謝申し上げる。
 もう一つ、飛行機繋がりの話ではないが、最近VISAに関してのトラブルを聞く事が多い。先日、カンボジア人の方々と日本に行く機会があったのだが、身分的にもキチンとした方々で銀行の残高証明や諸々の書類も提出したにも関わらず、VISAが発行されなかったのだ。急遽、日本企業にご招待の書類を出していただいて事なきを得た。それを悪いとは言わないが、日本は少なくとも観光客の窓口を増やしたり観光誘致を推進したりするべく様々な努力をしているのだから、もう少しハードルを下げるために細やかな対応が必要なのではないだろうか。
 確かに、日本に行った後母国に戻らないで就業したり、行方不明になったりする不届き者がいる事や、世界的にテロに対しての警戒を強化している事も理解できる。しかし、日本人とのふれあいや街並みの綺麗さ、ルールや行動の正確さ等、行かなければ、見なければわからない良さを1人でも多くの方々に体験していただきたい。現在住んでいるこの国においても、カンボジア人の方々が漠然と「日本は良い国だ」と思うだけでなく、実際に訪れて体感していただく事でカンボジアの発展に少しでも役立てられればと思う。先に触れた訪日の際も、カンボジア人の方々は日本の美しい景色や観光地の写真よりも、サービスエリアの分別されたゴミ箱や側溝の写真、信号を守って停車している車や歩行者等に興味を抱き、多くを感じとっていた。それらを通じて得た経験がいつかこの国で役に立つ時が来ると、彼らを見ながら確信した。もちろん、日本入国の精査は必要だが、やはり直接見て触って感じて経験し、それを持ち帰る人達が増える事で両国が良くなることは、火を見るより明らかだろう。