2016年も成長速度を緩める事なく、尚且つASEAN経済統合に足並みを揃えるべく法整備や改革が進められているカンボジア。しかし、一足飛びにはいかない問題も多く、更なる改革を求められている。
利便性や効率、発展の裏側には必ず生じる問題があり、その両輪を上手くコントロールする事はなかなか難しい。人々の移動を例に挙げると、「歩き」の人が「自転車」に乗れば、行動範囲は広がる。その次には速さで勝る「バイク」に乗りたくなり、誰かと一緒に行動できて雨や暑さも関係ない「車」に乗りたくなる。しかし、その裏側には道路の整備や排ガス問題、交通渋滞等の問題が生じ、間接的には盗難や犯罪増加等の問題が起き得ると言える。
ゴミの問題も最近よく耳にする。まだまだ平気でゴミを捨てる習慣があるこの国では、まずゴミ箱以外に捨てる事が良くないという認識が欠けている。先日も川に魚を放って徳を積む光景を見ていたら、お祈りをして魚を放つところまでは厳かだったが、その後に魚を入れていたビニール袋を川に投げ捨てるのを目にして一気に冷めてしまった。一部では早朝からビニール袋を自転車に積み、街頭のゴミ箱を1つずつ周って片付けている者もいるが、分別など全くされていない。分別されたとしても、各々を処理できない現状では埋め立てするしか方法がないのだが、なんとこの時に危険物や医療ゴミ等も一緒に埋めてしまうのだ。市街地の発展に伴う池や沼地の埋め立てで、9キロメートル先の水源から自然ろ過されてくる水も自然浄化作用が弱まってきている。環境や土壌汚染といった、生活に直接的に関わる問題も起きてくる。以前カンボジア政府関係者との会議で、プノンペンにおけるゴミに関する数字を聞いて驚いた。
人口 : 2,130,000人
世帯数 : 427,000世帯
家庭から1日に廃棄されるゴミの量 : 2,300トン
病院(国立・私立・診療所含む) : 410軒
1日に病院から廃棄されるゴミの量 : 15トン
工場 3,100軒 (廃棄物量:不明)
これらの数字を見るだけでも、ゴミ処理は早急に手立てしなくてはならない問題の1つと言えるのではないだろうか。
インド、中国のような大気汚染の問題を抱える国の事も、対岸の火事と思って油断してはいけない。すぐ目の前にある次なる問題として今できる事から解決の糸口を見つけなくては、いずれ発展の勢いに影を落としかねない。昨年の11月にシェムリアップ州と神奈川県が低炭素観光都市の覚書を締結したが、アンコールワットの観光客増加に伴う電力不足や排気ガス増加といった問題解決の必要性は、都市化が進むプノンペンにおいても同様だ。太陽光発電のような再生可能エネルギーの活用や、電気自動車や排出ガスの低いハイブリットカーの導入促進、ゴミのリサイクル等、早急に進めなくてはならない事業がある。現在、カンボジアはそれらの問題に立ち遅れている分、一時の問題先送りの解決ではなく、近隣諸国のお手本となるようなクリーンな国になるチャンスとして対策を講じるべきだろう。