日本のTSUTAYAといえば、本屋でありながら空間・演出・取り扱う商品も今までの概念を超えた発想で展開している事は周知の事実だ。筆者も都内に住んでいる時は、夜中に六本木ヒルズの店舗を利用したものだ。あの発想はどこから来るのか以前から気になっていたが、今度は家電製品との融合を試みるという記事を読み、また驚かされた。確かに美容に関する本の横に最新のヘアドライヤーがあれば興味を持つだろうし、料理本と一緒にワッフル焼き機が置いてあれば自分でも試したくなるに違いない。本とコーヒーの組み合わせもそうだが、こういった心理的効果を狙って新たな購買力を掘り起こす方法には本当に感心する。どうしてもストレートな営業しか指導出来ないカンボジアでは羨ましくもあり、まだまだやるべき事の多さも実感する。
「頭の中にゴルフコースを思い描くような営業を心掛けろ」と若い時に上司に言われた。思い切りドライバーで振り回すのでは無く、最後のパットまでイメージして、その上で風や芝目といった様々なシチュエーション、即ち相手の考えや予算等を考慮して商談に臨み、メンタル面でも平常心を忘れないで仕事をしなさいと教えられた。当時、まだゴルフなどやった事がない自分にはピンと来なかったが、自らクラブを握るようになった時、一つ一つが確かにセールスと繋がる事に気付いた。それからは、見えないクラブセットを担いで商談するようになったのを思い出す。
この国でも最近、低価格・少量で何杯もお替わりができ、お腹の具合や懐事情を考えながら食事できるお店が出てきた。直接商品に結び付く工夫だけでなく、朝礼や掃除・爪の検査を実施して、商品構成や顧客心理・企業イメージで間接的にアピールする方法も目にするようになった。一つにはやはり日系企業の進出により、ビジネスの進化や顧客本意という立場から考えられるようになって一歩前進できたのだろう。また、若者層がアセアン諸国のビジネスを参考にして今までにない手法を取り入れたり、新たな商材を用いて展開したりするニュースタイルも見受けられる。もちろん旧態依然としたビジネスとのギャップはあるが、中身が変わりつつあるビジネス業界に対して1年前と同じ考えやトゥクトゥクで市内を一周しただけの薄い見識で仕事を始めたら、間違いなく自分の算段と現実との差に戸惑うだろう。1年前と比べて、やっとそれを理解したのか対処方法が浸透したのか、安易な出店が減ったように思う。しかし、ある職種においては相変わらず同じ理由で進出して来ようとし、かき回すだけかき回してカンボジア人にも迷惑をかけた上に撤退する輩に、危機感を覚える時もある。日本人としてのアイデンティティーを持ち、カンボジア人とこの国において、お互いが向上していける仕事を目指して欲しいものだ。