//立つ鳥跡を濁さず

立つ鳥跡を濁さず

 最近カンボジアで日本人が増えてきたように感じる。例えば以前は日系レストランなんかに行くとだいたい一組は知り合いがいたが、今は知り合いに会う方が珍しい。それだけ昔よりも飲食店が増えたという事もあるのだろう。
 紙面でもたびたび言っている事だが、日本人が増える事は喜ばしい事であるが、増えるという事は中にはいろいろな考えの人も来るし、必然的に帰国する人も増える訳で、それが人事異動等で帰国する場合はさほど問題ないのだが、事業が上手くいかずにあえなく撤退する場合、その後処理をしっかり行わずに帰国する事業者がいる。
 普段カンボジア人スタッフに対して偉そうに責任だ何だと講釈をたれている輩に限って何の責任も取らずに逃げ出すのである。
 具体的には給料など諸々の支払いをせず、店舗やオフィスなどの契約もそのままに夜逃げ同然でカンボジアからいなくなってしまうのである。そんな事が出来てしまう人間性だから事業も上手くいかなかったのではないかとさえ思ってしまう。
 事業が上手くいかなかった事は仕方がない。どんなに潤沢な資金があろうがどんなに一生懸命頑張ろうが100%上手くいく事業などありはしないのだから失敗する事もあるだろう。確かに私も以前に会社を潰した経験があるので、経営者があと少しもう少しと粘りたくなる気持ちはじゅうぶん理解できる。しかしその粘りが結果として周りに迷惑をかける事になる可能性も考えなければならない。「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがある通り、余力を計算し給料の支払いや取引先への支払い、諸々の契約の解除などしっかり精算して帰国するべきである。
 しっかり精算さえすればまた新たな再出発をする事も出来るが、それを全て投げ出してしまうという事は、これまで築いた信用や人脈を全て捨ててしまう事になり、その後の人生をこそこそと生きていかなければならなくなる。そういう人は今まで何を大事にして生きてきたのだろうか。
 残されたスタッフは二度と日系の会社では働きたくないと思うだろうし、取引先も日本に対するイメージは悪いものになってしまうだろう。
 同じカンボジアで働く日本人としても働きづらくなる訳で、自分の事しか考えていない身勝手な事業者は本当に許し難い。
 もちろんこのような事業者はごく一部であり、本来しっかり後処理をするのは当り前の事であるが、私の周りにいるしっかり後処理をして事業撤退された方々をとても尊敬するし、諸々の事情で事業は撤退したとしてもむしろ信用度は高まっている。また何かを始める際には同じスタッフがまた働かせてほしいと言ってくるかもしれない。昔の取引先も戻って来るだろう。とても素敵な事ではないだろうか。
 今後カンボジアへ進出を検討されている方はどうかしっかり予実管理を行い、撤退のタイミングも計画した上で進出して頂きたいと願う。