5月8日、第155回世界赤十字デーを記念する式典が、プノンペンのカンボジア赤十字本部で行われた。式典にはサムダッチ・フンセン首相と首相の妻でカンボジア赤十字の代表を務めるブンラニー・フンセン総裁が揃って参加した。その他政財界、芸能界などからも多くの著名人が参加した。
演説の後に行われた支援金の受け渡しでは、支援者からサムダッチ・フンセン首相夫妻へ直接支援金が手渡された。コン・サム・アル王室担当大臣がシハモニ国王陛下の名代として支援金を納めたのを皮切りにサイ・チョン上院議長、ソー・ケーン内務大臣など閣僚がそれに続いた。そしてその後は民間企業の代表者らが続々支援金を渡したが、中には10万ドルを超える多額の支援金を納める企業も有り、発表される金額にその都度どよめきが起こった。支援金を納める列は約2時間程度続いた。支援金の合計額はその場で集計され発表されるが、今年は昨年の約1340万ドルを大きく上回る約1800万ドルが集まった。
式典を含めても僅か4時間程度で1800万ドルを集めたカンボジア赤十字だが、様々な分野において世界中から多くの支援を受けているカンボジアでこれだけ多くの支援金を集められる背景には、この国の複雑な統治と経済システムがある事を理解しなければならない。そしてそれらのシステムを一概に否定してもいけない。カンボジア赤十字はフンセン首相婦人であるブンラニー・フンセン女史が総裁を務め、国内の様々な分野に多大なる影響力を持っていることで知られている。その為、ある意味で政府から独立し、独断によって迅速な行動を取る事が出来、特に地方農村部の生活環境改善にカンボジア赤十字の予算は欠かす事が出来ないものとなっている。実際にカンボジア赤十字は2017年の一年間だけで、地方農村部に重点的に433の井戸と7つの池を整備し何千世帯にも上る多くの国民に安全水を供給した。それに加え、特徴的な事業に自然災害等が発生した際の緊急援助活動が上げられる。カンボジアは洪水や干ばつなど水に関連する災害の被害を毎年被っており、昨年発生した洪水では1万4千戸が被害を受け多くの国民が避難を余儀なくされた。そのような場合には防災委員会が活動を行うが、政府予算の範囲内ではどうしても対応に不足が出る場合がある。その際に援助活動を積極的に行うのもカンボジア赤十字の役割で、フンセン首相も演説の中で洪水被害の際には防災委員会と赤十字がその対策と援助を行うと説明し、関係省庁は洪水への備えを整えるよう述べた。
このようにカンボジア赤十字は、社会保障が構築途中にあるカンボジアにおいて人道的な観点からみて重要な役割を担っている。しかし、1800万ドルという多額の支援金を集めた背景にはもう一つ大きな要因が考えられる。それはこの国の起業家や著名人にとって慈善活動がある種のムーブメントになっているという事だ。この国の人々の根本にある施しの精神が、FacebookなどSNSの普及により容易に広く知らしめる事が出来るようになった。余剰資産の一部を慈善活動に充て、その企業、そして個人が社会に貢献していると言うイメージを形成する。それがまた次の機会を生む。そんなサイクルにカンボジア赤十字は大いに利用されている側面がある。
カンボジア赤十字が毎年の式典で集める支援金は、近年の安定的な経済規模の拡大に伴って毎年増える傾向を示している。支援金を支援する側に取っても、その支援金を受け取る直接の国民にとってカンボジア赤十字の果たす役割は大きい。