アジア開発銀行、2019年の経済成長率を7%と予想
アジア開発銀行は4月2日、アジア開発展望2019(AOD2019)を発表し今年のカンボジアの 経済成長率を7%、2020年を6.8%と予想、昨年の非常に好調な経済実績を受けて緩やかながらも 堅調な成長が見込まれると発表した。 AOD2019年によると、主に先進国と中国で景気の減速が予想されるためカンボジアにとって 主要産業となっている縫製関連の輸出部門と観光部門の成長は緩やかになるが、それでも今後2年 間は高い成長率が予想されるとしている。成長の将来的な推進力としてAOD2019は、民間部門 の需要を満たすための職能スキルを持ったカンボジア人の人的資本の質を向上させることが重要 と説明している。また、今後の課題として世界経済が予想以上に深刻になる可能性があること。EU がカンボジアに対して特恵関税の一時的な廃止を検討していること。不動産に投資が集中し金融 セクターの安定性にリスクを与えていること。深刻な干ばつが予想されることの4つを挙げてい る。 またAOD2019ではカンボジアの既存の労働力が提供できるスキルと雇用主が要求するスキルが 一致しないスキルギャップを課題として強調。特にデジタル人材の育成に関わる質の高い教師の育 成の重要性を指摘した。
![](https://phnompenhpress.com/wp-content/uploads/2022/07/003-20190407009-7204071-1024x683.jpg)
年間の祝日が28日。フンセン首相、多すぎる祝日の削減に言及
課題を指摘されながらも安定した成長を続けているカンボジアだが、今後もさらに安定した成 長を続けるために様々な分野で改善が行われている。例えば、多すぎた祝日もついに削減される かもしれない。 カンボジアでは多すぎる祝日がカントリーリスクの一つとして主に多国籍企業から指摘されて きた。祝日の数は昨年から5月20日が新たに「クーメール・ルージュの犠牲者を悼む日」が加えら れたことで年間28日に、振替休日も含めると31日となった。外国人の間では、多過ぎる祝日を把 握できず、通勤時いつもより空いている道を奇妙に思いながらも、会社に行ってみると誰も来てい ない。慌てて社員に電話すると寝ぼけた声で「今日祝日ですよ」と言われやけになり朝から一杯 引っ掛けたなんて話も稀に聞いた。多国間で業務を行なっている企業にとって、カンボジアの祝 日はあまりにも多くなり過ぎた。最近急速に厳格化され始めている有給休暇制度も相まって雇用 される方にとって都合の良い状況が続いていたが、生産性に反して高騰し続ける賃金と相まって カンボジアの国際競争力が競争国と比べ相対的に低下、企業誘致の弊害の一つになっていた。 そんな状況に、ついにカンボジア政府が動いた。3月29日に首相府にて行われた第18回官民合 同フォーラムにてフンセン首相自ら祝日の削減に言及した。首相は理由として生産性を向上させ、 さらなる投資を呼び込むことをを挙げ、年間の祝日数を7日程度削減する方針であることを明らか にした。フンセン首相は「あまりにも多くの祝日があった場合、投資と工場はカンボジアから逃 げ出すでしょう。伝統的な慣行を排除する。例えば国王陛下の誕生日を祝う3日間の祝日を1日だ けにする」とも付け加えた。カンボジアの祝日はタイやベトナムなど近隣諸国と比べても倍以上 多かったが、フンセン首相が公の場で削減について発言したことから時期は未定とされながらも 今後確実に削減される方針のようだ。
![](https://phnompenhpress.com/wp-content/uploads/2022/07/007-20190407009-7101665-1024x683.jpg)
全ての国の投資を受け入れ、安定した成長を続けるために普通の国への改革は続く
カンボジアは近年、中国依存の高まりに伴って強権政治を行っているとの報道が散見されるよ うになった。EUの特恵関税も見直されようとしているが、フンセン首相は欧米の身勝手な思惑によってカンボジアは悲劇に巻き込まれたと繰り返し述べており、特恵関税を維持するためにEUに 頭を下げるつもりはないと発言するなど強気な姿勢を崩していない。しかし、中国だけを優遇し ているわけではない。フンセン首相はこれまでも一貫して全ての国の投資を歓迎すると述べてお り、先月22日に行われたプノンペン-シハヌークビル間の高速道路起工式典では中国の外務副大臣 を前に「私は決して外国のパートナーを拒絶しなかった。私たちは全てのパートナーから融資を受 ける。中国がカンボジアに投資したときカンボジアが親中国であるとは言ってはいけない」と述 べるなど中国だけを優遇していないことを明言、その方針に今後も変わりはない。そして国際競 争力を維持するため、祝日の削減などわかりやすいものから、教育改革、労働環境改革、社会保 障改革、司法改革、物流改革なども着実に行われている。これまでカンボジアでは混乱期から続 く独特な習慣が受け入れられてきた。しかし、発展の段階に入った現在にはそぐわない習慣も多 い。安定した成長を続けて行くために普通の国への改革は続く。