//様々な差が浮き彫りとなった2018年のカンボジアサッカー

様々な差が浮き彫りとなった2018年のカンボジアサッカー

 10月6日、フンセンカップ決勝戦の試合終了を告げる笛の音とともに長かった2018年シーズンも終わりを迎えた。カンボジア人のみで競うフンセンカップをナショナルディフェンスFCが、外国人選手も登録可能なメットフォンカンボジアリーグをナーガワールドFCがそれぞれ優勝した今シーズンのカンボジアサッカー、代表チームでは本田圭佑が実質的な監督に就任するなど今年も国内外に様々な話題を提供し大いに関心を集めた。そんなカンボジアサッカーの今シーズンは様々なところに差を感じたシーズンだった。

チーム間の競争力の差が浮き彫りに

 今シーズンはこれまでのシーズン以上に優勝を目指して、運営・現場レベルでしっかりと仕事をしているか否かがはっきりとわかるシーズンだった。今シーズン、ビサカFCとソルティーロアンコールFCと言う2つのチームが新たにリーグに加入したが、ビサカFCは優勝すると言う強い意志の下豊富な資金力を武器に、昨シーズンまでナショナルディフェンスFCの中心選手だった北朝鮮出身選手4人を全員獲得、さらに北朝鮮からもう1人の選手を獲得した。そして国内の有力チームからもスタメンクラスを引き抜き、参戦初年度優勝を狙えるメンバーを集めた。その投資は結果に表れ、優勝こそ逃したものの、一気にトップチームの一員に加わった。カンボジアリーグに参加するチームはそのほとんどがオーナー企業の持ち出しによって運営されているが、今シーズンはチーム間で大きく差がついた印象があり、戦力が偏った結果、シーズン開始直後には優勝を狙えるチームが数チームに限られた状態となった。大口のスポンサー獲得が難しくチーム単体で黒字化することがむずかしい国内リーグはオーナー企業のサッカーへの情熱がチームの成績に大きく影響する事もあり、今シーズン優勝すると言う意志を示す事のできなかったチームが来季以降も継続して参戦する限り、このチーム間の競争力は広がる様に感じた。

代表と国内リーグ、その差は依然縮まる気配がない。

 また運営面に関してもその差を感じずにはいられなかった。カンボジアのプロサッカーリーグの運営は今から2年前、2017年シーズン開幕時に運営団体がそれまでのカンボジアサッカー協会(FFC)から新しく設立されたカンボジア国立競技委員会(CNCC)へ移された。それによってFFCは日本のJFAの同様に代表チームの運営に専念し、国内プロリーグの運営はCNCCへと明確な線引きが行われた。代表運営とプロリーグの運営が別れていることは決して珍しいことではないが、カンボジアは組織が別れたことで生まれた様々な問題にまだ全て対応できていない。それに伴って観客動員数などは以前に比べて減ってしまったようにも感じる。国内リーグの注目度がそれを表しているようで、FFCが運営する代表選は一種の「お祭り」のような盛り上がりを見せるのに対して、国内リーグは閑古鳥が鳴く状態が続いている。CNCCは独自のメディアチームを持ち、所属チームとも連携して、積極的なファン獲得への動きを見せており、SNSなどでは注目を集めることができるようになったが、特定のサッカーチームを応援するということ自体がやっと定着し始めたカンボジアではまだまだ安定した集客には繋がっておらず、代表戦には遠く及ばない状況だ。国内リーグの注目度が向上しないことには、各チームのスポンサー獲得も難しく、引いては代表チームのレベル向上にも影響を及ぼす。組織が別れたとは言え、ここから大きく継続的な成長続けたいカンボジアサッカーには両組織のこれまで以上の協力関係が必要なようかもしれない。

世界的ビッグネームがカンボジアサッカーを次のレベルに押し上げるか。

 それぞれの部署の担当者は懸命に働いてはいるが、このようにすでに生じてしまい今後さらに大きな差になりかねないいくつかの問題。しかし、解決するために追い風が吹いている事も忘れてはいけない。世界的なビッグネーム本田圭佑の実質的なカンボジア代表就任がそれだ。彼にかかる期待の声は、ファンはもちろん、カンボジアのサッカー関係者、そしてサッカーを取材しているメディからも多く聞こえてくる。2年と言う契約期間の中で、本田圭佑がどこまでその手腕を発揮できるかはわからないが、先日のマレーシア戦で指揮をとる本田圭佑はすでに現場のスタッフからのリスペクトを得ているように感じた。鶴の一声と言う言葉が日本にはあるが、本田の号令が鶴の一声になり、カンボジアサッカーを次のレベルに押し上げてくれることを期待したい。