//新NGO法案 両院で可決

新NGO法案 両院で可決

カンボジア国内で長らく議論の的となってきた「結社およびNGOに関する法案」いわゆる新NGO法案が、遂に両院にて可決された。6月5日に閣議決定された同法案は、16日には下院に当たる国民議会議員に提出された。下院提出後も、市民団体やNGO関係者らがケム・ソカー議会副議長(野党救国党所属)に面会し、同法案に対する公聴会の開催と採決そのものの先送りを求めていた。しかし、結局7月13日に野党救国党議員が議会をボイコットする中、過半数を占める与党人民党議員のみで採決を行い、可決された。そして7月24日、同法案は上院議会に提出され、同じく上院でも野党所属議員のボイコットの中で採決が行なわれて可決。同法案は両院を通過し、成立する運びとなった。

 

資金の流れを明確にする為という同法案に難色を示すNGOと国際社会

 

閣議決定後には、市民団体とNGOによる抗議活動が連日行なわれてきた。彼らは同法案に、NGOの活動を制限したり登録の際に高い障壁を設けたりする等、国民が政治に参加する権利や言論・表現の自由を侵害する内容があるとしていた。最近では、在カンボジアアメリカ大使も同法案に対して強い危惧を表明していた。このような、いわゆる野党寄りの勢力から激しい反対がある中で半ば強行的可決となったわけだが、ではいったい同法案は何が問題なのか。

この法案について議論が始まったのは、今から10年以上前のことだ。その当時、内戦から立ち直ろうとするカンボジアに多くの国々が支援を表明し、実際にソフト・ハードの両面で支援を行ってきた。そして、その流れに乗って多くのローカルNGOが設立され、莫大な支援金がそこに流れた。その中には、人権関連活動を行う事でアメリカを始めとした欧米諸国から多額の支援金を得たローカルNGOも多かった。しかし、当時のカンボジア政府はまだ今のような確固たる体制を築いていたわけではなく、NGOに流れた莫大な支援金がどのような流れで誰のもとにどれだけ渡っているのかという事が把握できておらず、金銭の流れが非常に不透明だったのも事実だ。そんな現状を危惧したフン・セン首相始め政府首脳陣は、金銭の流れを明確化するという方針のもとに、2004〜5年頃から特に欧米からの莫大な資金を得ている人権関連NGOへの締め付けを徐々に強めていった。このような政府の方針が、しだいに人権関連NGOの活動そのものを規制し、言論の自由を妨げるものだと考えられるようになった。そして、2008年の国民議会議員選挙時に同法案の草案が完成。この草案策定に対して、国連等の国際社会は懸念を表明した。日本政府も、外遊でカンボジアを訪れた岡田克也外務大臣(当時)がフン・セン首相と会談を行った際、同法案について反対意見を表明している。

 

依然として不透明ではあるが、政府の手腕に期待したい。

 

資金の流れを明確化するという目的以外のところがクローズアップされ、依然として不透明なところが多い同法案。過度な取り締まりや処罰と曖昧な条件が恣意的に運用される恐れがあるとして、依然として国際的にも批判が強い。また、政府は法案成立後に現在カンボジアで活動しているNGOを全て再登録させるとしており、それもまた多くの反対を招く一因となっていた。しかし、この再登録問題に関して野党救国党サム・レンシー党首は、国民議会での審議前にフン・セン首相から「NGOは、この法案に対して疑心暗鬼になりすぎないで欲しい。なぜなら、現在政府に登録済みのNGOは再登録の必要はなく、自動的に登録が引き継がれるからだ」と言われたと説明する等、今後もいくつかの点で変更があるものと予想されている。

カンボジアでは、法案は成立したが実際に施行されてみたら思っていたよりも混乱が無かったという事も多い。しかし残念ながら、何かのきっかけで首相の逆鱗に触れた為に、いきなり厳格に適応されて融通が効かなくなるという事も少なからずある。この辺りは、現在強く反発している人権関連NGOや野党勢力の今後の対応次第と言えるだろう。多くの人権関連NGOに対して欧米諸国が支援している事は否定出来ない事実であるが、権利は主張するが義務は果たさないというようなやり方は控えていただきたい。いかに資金を持っていようとも活動地域は他国であり、他国の政府と法律が存在している。彼らは、行き過ぎた反対運動が他国に与える影響を理解する必要がある。

それから、明るい見方をすれば、NGO活動を厳格に取り締まるという政府方針は「支援団体から企業へのシフト」であるともとれるだろう。「支援から投資へ」と、利益を生み、国益を生み出す民間企業へ資金の流れをシフトさせていく事でこの国の成長が更に加速し、国民一人一人が国の成長を実感できるような流れを作る。NGOへの締め付けの裏側に、このような期待を見出すという事もできるのではないだろうか。

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