//外国人技能実習生派遣事業の光と闇

外国人技能実習生派遣事業の光と闇

外国人技能実習生派遣事業、カンボジアに住んでいる人ならば一度は聞いたことがあるであろう。簡単に言うならば、先進技術を有する国が、それを持たない国の人材を一定期間受け入れ、先進技能を身に着けさせ、帰国後それぞれの国の発展に役立ててもらうおうと言う国際協力事業の一つで、日本では公益財団法人のJITCOの管轄の下に行われている。

 

しかし、この事業最近良くない話ばかり聞かないだろうか。特に問題となっている話が、受け入れ先の労働環境等から実習生と受け入れ先が破綻をきたしたというもので、同様の話が後を絶たない。実習生は開発途上国出身と括られている通り、様々な国から派遣されているが、カンボジア人も例外ではなく不当な扱いを受ける場合がある。最近のひどい例を上げれば、韓国に派遣された研修生が受け入れ先の中国人監督者から暴行を受け大使館に逃げ込んだという事があり。現地大使館は迅速に追われた。このように、実際に実習生に危害が及ぶことは稀なようだが、日本でも劣悪な労働環境に置かれ同じように大使館に相談したという例が過去に存在している。

 

しかし、疑問に思わないだろうか。日本の労務環境がひどい所は確かにひどい。日本人でも、昼夜問わず働かされ、最後には裸足で逃げ出したなんて話も聞く、しかし、あなたの周りのカンボジア人を見返してほしい。彼らの勤務態度はどうだろう。お世辞に褒められた勤務態度ではない者も多いのではないだろうか。3つ子の魂100までとはよく言ったもので、環境が変わったからといって急に優等生には成り得ないのが人間である。少なからず実習生側にも問題があった例もある。関西地方の建設現場に派遣された実習生、最初の数日は問題なく働いたが、徐々に態度が乱れ始め最終的には現場に顔を出さなくなってしまった。現場は困惑したが無理に引っ張りだすわけにも行かず、しばらく見守っていると今度は実習生が大使館に労働環境が悪く不当な対応を受けていると相談。そうなると益々困るのは受け入れ先、結局、勤務していない期間の賃金を全額支払わされた挙句実習生はそのまま帰国してしまったと言う。このように、実習生側が不当な扱いをされていると言う面がクローズアップされているが一皮剥けば少なからずどちらが悪いとはいえない事例が存在しており、難しさがあることを伺わせる。

 

このような難しさの背景には一体何があるのか、実際に実習生の送り出し機関に話を聞くと幾つかの問題点が浮上してきた。まずカンボジア政府、特に労働省と送り出し機関との連携不足があげられる。認定を受けている送り出し期間はカンボジア国内に52機関存在している(JITCO資料)が、送り出し機関を束ねる組織が整備されておらず、送り出し期間どうしが意見交換をしたり、情報を共有することができていないと言う。また、本事業の参入に関しても明確な規定があるわけではなく、グレーなやり取りによって解釈される部分も少なからず存在するという。それから、実習生の送り出しに関しても特に定められた規定がないため、利益優先のいわゆるブローカーの様な存在の送り出し機関も存在しており、事前の日本語教育が不十分であったり、全く教育を受けずに派遣されるという例も存在する。そして、日本に派遣後も多くの問題がある。中でも受け入れ先の受け入れ体制が整っていない、実習生を本当に、単に労働者としか扱わず、技能を身につけるための環境を整えていない。そのための投資をしていない等のずさんな受け入れ体制をとっている企業も多いという。

 

ではなぜ、問題が山積な状況にも関わらず、この分野は毎年成長を続けているのだろうか。それは送る側、受け入れる側の利益の一致に他ならない。送る側、つまり実習生は日本に派遣された場合、3年の派遣期間で約250万円の貯金をつくりカンボジアに帰国するという。そして帰国後には家族の借金を返したり、両親に家を建てたり、新規事業を起こす開業資金に当てるのだという。つまり金銭が目的ということだ。実際に派遣される実習生の多くは地方の農村出身者で、生活に苦労している者が多いのが現状だという。そして受け入れ先のメリットも安い賃金で働き手を確保することに他ならない。日本では職種を選ばなければ、職にありつけるまでに就業環境は改善したと言われているが、あくまでも職種を選ばなければという話で、選ばずにはいられないのが日本人だ。そのため地方の農業生産法人や縫製業、食品加工業などは万年人手不足で、猫の手も借りたい。そして、なるべく安くその人手を確保したいというのが本音だ。この双方の利害の一致が今日のこの事業の成長を支えている。

 

このような背景で成長を続ける本事業、2015年には約2000人が日本に派遣され、毎年派遣者数増加が見込まれているが、先に述べた通り問題は多く、関係各位による抜本的な改革が期待される。聞き取りを行なった際に聞こえてきたのが、実習生への基本教育を充実させるべきという意見だ。通常3-6ヶ月の期間で事前の日本語教育と就業前教育が行われるているが、派遣前に能力検定などは儲けられておらず、日本語能力にはかなりばらつきがあるのが現状で、派遣先でのコミュニケーションに支障をきたす場合もあるという。また、この教育の問題は今後実習可能分野が拡充された際にも問題となってくる。日本の資格試験などに対応できない問題が出てくるからだ、そしてその他にも、他国の実習生との競争という問題もある。実際に中国などの実習生と比べた場合にカンボジア人実習生は生産性が劣っており、今後選ばれないという問題も出てくる可能性がある。日本ではかつて集団就職で田舎を離れた若者を金の卵と呼びもてはやし、実際にそこから花開いた若者も多い。この技能実習生もそんな可能性を秘めた国を越えた金の卵たちと言えるかもしれない。金の卵が腐ってしまうかどうかは実習生個人も問題も当然大きい。しかし、送り出し機関と派遣先、両者の環境によっても大いに左右されてしまう。そのことを十分に理解して送り出し、そして受け入れて欲しい。

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