//フンセン首相と人民党、選挙戦とその先。

フンセン首相と人民党、選挙戦とその先。

 7月29日に控えた国民議会議員選挙(総選挙)に向け、7日早朝各党の選挙活動がスタートした。必勝を誓う与党人民党は結党67周年を祝う式典を選挙戦決起集会と合わせて開催、約6万人の支持者が集った。式典にはフンセン首相夫妻、ヘンサムリン下院議長夫妻のほか党の要職が顔を揃えた。演説したフンセン首相は「野党によって画策された色の革命が法の力によって阻止された」と述べ、人民党の過去の功績を改めて示し支持を求めた。その他にも総選挙で勝利を収めた後の5年間の政治基盤に関しても発表をおこない、すでに勝利後を見据え長期的な戦略を持って人民党が国を導いていく姿勢を示した。式典終了後は集まった約6万の支持者がそれぞれの出身地区に向けてパレードをおこなった。選挙管理委員会によると土曜日に活動をおこなった政党は登録している20の政党のうち11でフンシンペック党、民主連合党、草の根民主党などがそれぞれ党本部などで集会とパレードをおこなった。

 フンセン首相が演説の中で述べたとおり、色の革命を企てた最大野党救国党が解党され、対抗馬が存在しない今回の選挙戦。人民党が圧倒的有利に選挙戦を進める中で、注目されているのが小規模政党の旧救国党支持者の取り込みと選挙そのものの投票率だ。前回総選挙で約45パーセントの得票率を記録した旧救国党、言ってみればそのほとんどの票が宙に浮いた状態であり、各小規模政党にとってこの浮遊票をどこまで獲得できるかが躍進の大きなカギとなる。その為、いくつかの政党では旧救国党副党首だったケム・ソカー氏の解放などを訴えているが政治評論家をはじめ識者は「達成されるあてのない無意味な約束である」と冷たい反応を示している。また、旧救国党のムー・ソクホー女史も地元紙に対して「人民党に対抗できる政党は唯一救国党だけだった」と述べ救国党にかわる政党は存在しないとの見方を示している。そして、支持者に対しては投票自体をボイコットするよう呼びかけている。この呼びかけは徐々に広まりを見せ、国外では抗議集会を行うまでになっているが、実際のところどこまで効果があるかは全く分からない。また投票率低下を狙ってSNSを利用した悪質な噂を流す者もいたが、フンセン首相自らが噂を否定する発言をおこない、噂を流した者には刑事罰を適用するとして捜査機関に捜査を依頼している。

 このように、小規模政党が小規模な活動に留まっている中で、先述した通り既に勝利後の5年間を見据え盤石の体制を構築している人民党は、結党67周年記念式典の中でフンセン首相が「2018年から2023年の祖国建設と防衛のための政治基盤」を次のとおり発表している。

① 国家の発展と調和のため独立・自由・主権・平和を守る。
② 全ての人々の生活条件を改善する。
③ 君主制を保護し、民主制を維持する。
④ 全てのレベルで行政を強化する。
⑤ グッドガバナンスのための改革を推進する。
⑥ マクロ経済の安定と公的財政管理に焦点を当てた社会開発と持続可能で包括的かつ公平な開発とそのパートナーシップを促進する。
また、この他にも国民生活に近いレベルで最低賃金の値上げや電気料金の値下げなども既に発表している。
 
 フンセン首相は政権の座に就き30年以上が経つ、近年は常に多くの批判にさらされている。しかし、権発足後から近年に至るまで多くの時間をカンボジアの平和構築と安定した成長のために割き、その成果が近年の急成長へと続いていることを忘れて批判だけをすることはできない。フンセン首相と人民党政権は総選挙で確実に勝利を収め、さらに大きく成長するカンボジアの姿を既に描いている。