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2016年初頭、プノンペンに日本の総合病院が開院予定

 2016年初頭に、日本企業の投資によって総合病院が開院する。投資を行うのは大手プラントメーカーの日揮、官民ファンドである産業革新機構、そして北原国際病院の関連会社であるKitahara Medical Strategies International(以下KMSI)の3社で設立された合弁会社、サンライズヘルスケアサービス社(SUNRISE HEALTHCARE SERVICE Co.,Ltd)。設立にあたっての出資比率は日揮が52.2%、産業革新機構が46%、KMSIが残りの1.8%となっている。医療そのものと医療従事者の教育はKMSIが担い、会社の運営と建設へのサポート、医療の周辺業務(警備、清掃など)は日揮が行う。
 病院名はサンライズジャパンホスピタル(SUNRISE JAPAN HOSPITAL)を予定しており、プノンペンのチョロイチョンワー地区では、2016年初頭の開院に向けて既に工事が始まっている。開院後は総合病院として、カンボジア国内では最高水準となる救急救命センターと健康診断センター、脳神経外科や循環器科、一般内科など9つの専門科を運営予定で、日本人医療スタッフ25人を中心に、100人以上の医療スタッフ・事務スタッフが様々なケースの患者に対応する。また、50床の入院患者の受け入れから始め、将来的には200床規模に拡大、医療教育施設の設立も視野に、地域医療の中核を担っていくことが期待される。

「病院まるごと輸出」のモデルケース

 本病院の設立は、安倍自民党政権が進めるアベノミクスの方向性にも合致する。アベノミクスの3本の矢のうちの1つ「成長戦略」の一翼を担うのが「病院まるごと輸出」。本病院事業開始に先立って2013年11月に行われた安部首相のカンボジア訪問時には、フン・セン首相を始め政府首脳との会談の中でもこの「病院まるごと輸出」が話題に上り、両首脳は「日本の先進的な医療技術・制度を活かしたカンボジア保健医療の向上に向けた協力を強化すること」で合意。安部首相は、会談後に参加した北原国際病院主催の医療セミナーの場においても「日本が強みとする救急救命病院を海外で初めて設立するのがプノンペンであることは喜ばしく、日本とカンボジアの協力のシンボルとなるだろう」と述べ、本事業に掛ける意気込みを伺わせた。そしてそのカンボジア訪問から約1か月後の2013年12月に、3社合弁での本事業の開始が発表され、本格的にスタートする運びとなった。

カンボジアの医療環境を向上させ、地域に根ざした経営

 冒頭に記した通り、本病院は株式会社により設立され、運営される。日本国内では株式会社による病院運営は認められていないが、海外では企業としての病院は珍しくない。本病院では企業としての経営をしていくためにどのような方法を考えているのか。事業概要の説明資料によると、主な対象患者として、カンボジア在住の日本人を含む外国人、さらに、高水準の医療を求めて近隣諸国に流出している約21万人が上げられていた。プノンペンの事務所で話を聞かせていただいた際にも、在住日本人に信頼できる医療を提供したいというだけでなく、負担をかけて海外に流出している患者も対象としたいという回答を頂いた。

さらに富裕層だけではなく、資金的に裕福ではないがカンボジアの医療に対する不満などからやむを得ず国外で治療を受けている層へのアプローチも大切だと考えているという。本病院では企業や団体等と協力して地道に医療セミナーを開催しており、一般市民が医療に関する知識を得られる機会を増やすことで、予防や正しい診療に結び付けたいとも考えている。
 さらに今後重要な要素の一つは、日本人医療者からカンボジア人医療者への技術移転だという。何事においても、現地化するということが重要なのは間違いない。本事業においても、カンボジア人医療者の育成によって信頼されるカンボジア人医療者を多く育成することで、当病院の経営だけにとどまらず、カンボジアの医療環境の向上に寄与できると語られた。

この病院の設立はカンボジアに暮らす人々からの大きな期待を背負っている。日本人の医療者からカンボジア人の医療者へ、高水準の技術だけでなく、命と向き合うマインドが受け継がれ、カンボジア人から愛される総合病院として末永く運営されることを期待したい。

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