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日系サッカーチーム、無念のリーグ戦不参加決定

盛り上がるカンボジアサッカーシーンに参戦するも、僅か1年で苦渋の決断

 近年のカンボジアにおいて成長著しい分野の1つに、スポーツが挙げられる。昨年のアジア大会での悲願の金メダル獲得に国中が沸いたのは記憶に新しいが、成績の向上と盛り上がりと言えばサッカーだろう。国内リーグのメットフォンカンボジアリーグ(Cリーグ)がカンボジアサッカー協会(FFC)の下に開催され、年々盛り上がりを見せている。
 そんなCリーグに昨年ある日系チームが参戦したが、2015年シーズンリーグ戦の不参加が決定した。代表者は「環境の変化に耐えることができず…」と発表している。これに対して、関係者は一様に「まったくの驚きであり、非常に残念」と動揺した様子で語った。日系チームの参戦表明は、前シーズンCリーグが始まる約3ヶ月前。満足な環境整備の時間もなく、戦力的にも厳しい中での参戦となった結果、成績は最下位。しかし、他チーム関係者が「彼らはチーム運営にベストを尽くしていた」と述べるように、リーグ中は目覚ましくチームが改善されていた。

カンボジアにおけるサッカーチーム運営の現状とは

 リーグ戦不参加決定について、サッカー関係者は「最大の問題は運営資金を得られなかったことでは」と語る。Cリーグトップチームのほとんどが親会社からの資金で運営し、スポンサー料で運営費を賄えることはない。しかし、スタジアムの建設や選手獲得のための多額の移籍金等、莫大な投資を行っている。FFC関係者は「この国ではサッカーチームの運営・投資がステータスであり、社会的な義務(社会貢献)だと考えられている」と、非常に興味深い説明をしている。トップチーム関係者も、将来の発展に備えての投資だと語る。
 この日系チームはカンボジアにバックグラウンドや大口のスポンサーもなく、先述の現状からすると無謀とも言える参戦だった。チーム発足時には中長期的なビジョンで取り組むとしていたが、運営自体が社会貢献と結びつくこの国では金銭との密接な関係についても考えるべきだった。準備不足と現状分析の甘さが招いた結果ではないだろうか。

本件から全ての関係者が学ぶことが必要

 国内の多くのサッカーファンは、日系チームが全体のレベルを引き上げることを期待していた。チーム関係者は、本件の影響を重く受け止める必要がある。また、サッカー関係者はリーグ戦不参加決定に至った責任はFFCにもあるとして、外国チームのための環境整備、安易な受容体制の見直し、参入資格設置の必要性等を指摘している。
 FFC関係者は落胆を隠しきれなかったが、それでも日本人に対する感謝を忘れないと語った。近年のカンボジアサッカーシーンの著しい発展の裏には、地道に築いてきた両国間のパートナーシップがある。日本サッカー協会はJICAを通してユース世代育成の指導者を送り、代表チームの躍進に貢献している。この日系チームも、引き続き子ども達へのサッカークリニックや貢献活動を継続する予定だ。この国のサッカーに関わる様々な専門家のためにも、今後は日本人のプレゼンス喪失を招くような事態がないと期待したい。

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