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スポーツの祭典、第二回ナショナルゲームズ。

 5月28日から6月4日の8日間、第二回目となるナショナルゲームズが開催された。日本の国民体育大会に相当するナショナルゲームズは2016年の第一回開催から2年ぶりの開催で、27種の競技が行われ約4000人の選手が参加した。

 今回の開催に向けて政府は前回大会から大幅に予算を増額し準備を進めて来た。特にサムダッチ・フンセン首相夫妻臨席の下、オリンピックスタジアムで行われた開会と閉会のセレモニーには約60万ドルの予算が用意され華々しい催しとなった。中国やマレーシアの専門家から技術指導を受けて構想の練られたセレモニーでは国内の著名なアーティストが歌や踊りを披露したほか、伝統武術ボッカタオやテコンドーの演舞など様々なパフォーマンスが大会に花を添えた。また開会セレモニーで灯された聖火は王宮内の特設会場でシハモニ国王陛下が灯したものをソーン・シウメイ(テコンドー)、チャン・バタナカ(サッカー)など著名なアスリートが会場までリレーし、最後にフンセン首相によって聖火台に点火された。シハモニ国王陛下がこのようなイベントに参加されることは非常に稀なことで、シハモニ国王陛下に参加を願ったことからも政府の熱の入れようを感じる。

 その一方で政府は、対外的に見せることだけに莫大な予算を用意したわけでは無かった。予算の増額は選手一人一人にも向けられていた。8日間の大会期間中、約4000人の選手が27種のスポーツで284個の金メダル、584個の銀メダル、そして703個の銅メダルを目指して競い合ったが、メダルを獲得した選手への報奨金が前回大会から大幅に増額したことも話題となった。前回37.5ドルだった金メダルの報奨金は、200ドルに引き上げられた。この増額は前回大会後に一部の選手から報奨金が低すぎると不満の声が上がったことによるものと伝えられているが、それに加えて増額には近年の選手を取り巻く環境の改善を政府が積極的に進めていることも大きく関係している。政府は近年、スポーツ選手が国際大会で残した成績への評価を高めており、メダルを獲得するなどした選手には首相府にてフンセン首相自らが勲章と賞金を与え、国民に選手の栄誉を讃えるよう求めている。

 このように、政府が国内外に対して強くアピールしたい背景には、2023年のシーゲーム(東南アジア体育大会)開催に向けて政府の下にスポーツ分野でも安定的な成長と、大会に向けた準備を順調に進めていることを広く周知したい狙いがある。その為に前回水泳など一部の競技を除いてほとんど全ての競技が老朽化の進んだオリンピックスタジムでの集中開催だったのに対して、今大会は水泳、ボクシング、ボッカタオ(カンボジア伝統武術)、バスケットボールなどがプノンペン郊外に新しく建設が進められている新ナショナルスタジアムと周辺施設のスポーツコンプレックスに分散開催された。これらは国際基準の競技施設として中国の支援で建設が行われており、2020年に全競技施設の完成を予定している。
 しかし、大会自体そして競技の開催が問題なく行われたからと言って全てに懸念がないのかと言うとそうでもない。特に競技と選手をどのように見せていくかと言う部分においては今後大きな改善が必要と感じる。確かに選手それぞれの成績向上への意欲は以前にも増して高くなっているが、一方でその競技と選手を国民がどのように見ているのか、彼らを外から取り巻いている環境はどうなのかと言うとそこにほとんど変化はなく、まだまだリスペクトの対象としての地位を得ていないように感じる。会場を目にしても観客席に座る観客の姿はほとんどなく、応援もほとんど聞こえずさみしさを感じた。アスリートは好成績を納めることが評価の対象といえばそれまでかもしれないが、そのアスリートが好成績を納められるように観戦環境を整備し、競技に注目を集め盛り上げる活動も今後進めて欲しい。

 シーゲームの自国開催を5年後に控え、いよいよ本格的にスポーツ振興にも大きな予算と注目が集まり始めたカンボジア。負の歴史を経て、強い愛国心をもつ国民が多いこの国にとって、スポーツは国の誇りを取り戻し、国民に自信をつけさせるにはうってつけの分野と言える。スポーツを取り巻く環境の継続的な改善と価値を高めていくことを、民間の競技団体はもちろんのこと政府も強力なリーダーシップを発揮して進めていってほしい。

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