ラストマイルワークス株式会社
代表取締役社長 小林 雄 さん
– それではまずLASTMILE WORKSの現在の主なサービスについてお話いただけますでしょうか?
今行なっている主な業務としては、東南アジアと日本の不動産業者向けのVR制作になります。具体的に説明しますと、まだ完成していないコンドミニアムなどの不動産を部屋の内装も含めてCG作成し、それをOculus RiftのようなVRヘッドセットを着用して立体的に見ていただくことで、建物が完成する前から完成図をより現実に近い形でイメージしていただくためのサービスです。VRを利用することで従来の見取り図や模型では伝わりづらかった空間のイメージがしやすくなります。
– 近年カンボジアは建設ラッシュですから、不動産業者と物件購入希望者、両者にとってとてもありがたいサービスですね。VRはまだ開発されて新しい技術だと思いますが、小林さんがVRに目をつけた理由はどこにあったのでしょうか?
会社設立当初から今まで常にある考えとして、お客様に対して自分たちの付加価値をいかに付けていくかというよりかは、カンボジアの人々により多くの機会を与えたいという、どちらかと言うと内向きで、ソーシャルインパクト寄りのコンセプトがあります。なので日本からのアウトソーシングを受けて、日本人がやりたくないことをカンボジア人に安価でやらせるだけでは、彼らの成長に繋がりづらいと思います。カンボジアではまだどこも取り組んでいないような新しいことを始め、付加価値の高いものを制作すれば、彼らの成長やキャリアアップに繋がるはずだと思い、VR制作を始めました。また近年カンボジアでは不動産への投資が非常に多く、建設ラッシュが続いている状況もありますので、不動産業界であれば将来的にも求められる人材になるはずだという考えもありました。
– 新しいものにチャレンジしたいという思いがあるとは言え、他にVR制作をしている企業が全くない状況でカンボジア人に一から教えていくということにリスクは感じませんでしたか?
発展途上国特有の現象だと思いますが、カンボジアではテクノロジーの発展が急激で、時にテクノロジーの進化がその段階を飛び越えることがあります。例えば今カンボジアではUberのような配車サービスが人気ですが、通常はタクシーが一般的になった後に配車サービスが利用され始めるという流れがあります。携帯電話に関しても、カンボジアでは固定電話が普及するというプロセスを飛ばして携帯電話が普及しましたよね。そういったことが起きる場所なので、いきなりVRというのもあまりリスクには感じませんでした。
– LASTMILE WORKSのミッションはどこに設定されているのでしょうか?
先に話しましたように、いかに社員を成長させられるかというソーシャルインパクト寄りのミッションもありますし、ただVRをやってみてその奥の深さやおもしろさも感じています。また携わるにつれ、不動産業界の情報の不透明さや、アナログで属人的な営業手法にも問題意識を感じました。一生に一度の買い物にも関わらず、エンドの顧客はざっくりと購入の意思決定をしなければならない、それが今の不動産業界だと思います。
ラストマイルワークスにはソーシャルインパクト寄りのミッションとテクノロジー寄りのミッション、この2つが存在していて、現時点ではその両方とも重要と考えています。スタートアップとしてVRだけを極めたいならば日本で活動した方がいいでしょうし、カンボジアの人々を幸せにできるかだけを考えるのであればNGOなどの活動でも良いのかもしれません。新しい価値をカンボジアから生み出すためには現地のスタッフにストレスを与えなければならないタイミングは必ずあります。しかしながら、カンボジアから世界に通用するサービスを開発するためには乗り越えていかなければならない壁だと思っています。
– 確かにそのバランスはとても難しいですよね。それらのミッションの先に見据えたゴールについてはどうお考えですか?
カンボジアからでも努力を続ければ世界と渡り合えるようなサービスを作り出せるという成功事例を作り、それを彼らに示したいという思いがあります。一般的には会社を上場させることは、そこがスタートであってゴールではないと言われていますが、我々にとっては1つの目に見える形での成功事例として、日本法人の上場を1つの目標に掲げています。ただ彼らの中には上場が何なのかあまり伝わっていない者もいますので、彼らにも分かりやすく、カンボジア1のテックカンパニーになるという目標も掲げています。この目標も何を持って1番なのかはっきりしませんので、分かりやすくカンボジアで最も多く人を雇うテックカンパニーを当分の目標にしています。今年中に100人は雇いたいですね。