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カンボジアをグローバル化の中心へ

大きく変化するアジア経済の中核へ 江頭 剛 さん ( Egashira Takashi ) Kintetsu World Express (Cambodia) Co.,Ltd. Managing Director

– この度は開業おめでとうございます。まずは、カ ンボジアのどのような点に注目して開業に至ったのか、 その経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

 

弊社は2013 年に中期経営計画を策定いたしま した。その大きな戦略の柱の一つに、“成長する新興 国でのプレゼンスの向上を図る”という目標を掲げて います。 メキシコ・ブラジル・ミャンマーなど成長著 しい新興国と同じくカンボジアは戦略的・重要拠点と して位置づけてまいりました。この度のカンボジア法 人の開設は、グレーターメコン地域のサービスネット ワークの拡充という観点から重要な意味を持っていま す。アジアへの日系企業の進出は近年非常に活発です ので、既存のタイ法人、ベトナム法人、そしてカンボ ジア新法人の連携により、グレーターメコン市場にお ける弊社のプレゼンス向上が図れるものと考えており ます。

 

– 御社では、カンボジア進出以前のグローバル化を どのように進めてこられたのですか。

 

海外での活動を広く行っている当社では、経営 の効率化とスピード化を図るために世界を5 つの地域 に分け、世界五極体制を敷いています。責任の明確化・ 権限の委譲を行い、グローバル化を一層強力に推進し ております。この体制のもと、海外では34 カ国に 381 拠点を持っております。例えば、中国では、日系 物流業者として初めて国内輸送ライセンスを取得しま した。当時の中国は省を越える度に税金がかかるとお 困りの声がありましたが、国内物流のライセンスを取 得したことで物流網が拡大しました。また、インドで は、現地企業と合弁会社を立ち上げ、円滑な国内輸送 が可能になりました。今後、カンボジアの旺盛な市場 ニーズに対応し、事業を拡大していきたいと考えてい ます。

 

– CML( カンボジア、ミャンマー、ラオス) の3国 はアジアの中でもフロンティアとされていますが、現 状をどう見ていらっしゃいますか。

 

カンボジアの1,500 万人と比較して、ミャンマー は人口が6,000 万人と多く、最初はミャンマーの方が 注目度は高かったです。また、近隣のラオスもカンボ ジアより一ヶ月早く進出しました。しかし、実際には ミャンマーは依然として規制が厳しく、ビジネスが成 立するにはまだ時間を要すると判断しました。他の企 業様も様子見という印象です。

 

– ミャンマーはイメージが先行してしまったせいか、 現在は足踏み状態もしくは一時撤退が多いですね。注 目度に対して未成熟でインフラ整備も不十分ですから、企業が撤退後に周辺国への進出を再考する可能性はあります。

 

ミャンマーと比較しますと、カンボジアは開放政策が非常に進んでおり、比較的、外国企業でも事業を行いやすいという環境にあります。進出後1~2年置いてから法人化というのが一般的な流れかと思いますが、当社の場合はカンボジアにビジネスチャンスを感じましたので、一刻も早くと法人化を進めました。

 

– そのカンボジアですら、特に法整備に関しては昨年までと大きく変動してきています。法人化は早く進めないと後々厳しくなる、まさにそのタイミングであったかとお察ししますが、その辺りはいかがでしたか。

 

法人化は容易な方だと耳にしていましたが、昨年の秋頃から厳しくなったため、タックスオフィスへの登録や多くの申請書類に時間が取られたという経緯があります。おっしゃるように、今後は法人を立ち上げるにしましても厳しい審査が必要になってくると思います。

 

– ちょうど混沌としているので、参入に関して緩い国という認識のまま来訪すると手続きが予想以上に大変、という状況が既に始まっています。そのような認識を正すために、また法人申請のルールの透明化のためにも、カンボジアがいつまでも「何でもあり」ではなく、経済国として歩み始めているという点を現地発で知らしめる責任があると思います。大企業が進出することでその波及効果も大きいでしょう。

 

―ASEAN 地域の物流が変わる

 

– ASEAN 経済共同体の発足を受けて、政府が国同士を線で結ぶような施策を検討し、物流ルートの所用時間や入国時の税関審査等も調査されています。また、今年着手されるタイの高速鉄道事業は国境近くまで敷かれるそうですが、カンボジアを拠点とした周辺国とのネットワークを今後どのように展開されますか。

 

やはり隣国のタイ・ベトナムの影響は大きいと思います。カンボジアはメコン地域の中心にあり、非常にフレキシブルな使い方が可能であると考えています。その中でもタイ・プラス・ワンとしてカンボジアに進出される日系企業のお客様のニーズに応えてルートを構築することを考えています。既にクロスボーダートラックと呼ぶ国境を越えるトラックで、二国間の物流を開始しています。この需要は今後も増加すると想定しています。

 

– どの国においても、海外企業が進出する際のきっかけは労働賃金の安さ、敷地の広さから始まり、次第に摩擦が生まれて次の国へ、という同じ道を辿りますね。そうなると、そろそろ残りの選択肢も限られてきたのではないかと思います。

先日、日本・カンボジア間の航空協定が締結されました。調印されたものの実現の時期は未定と言われていますが、企業としてはやはり期待していますか。

 

期待しています。今、我々が抱えている問題としましては、プノンペン国際空港に発着する便は近距離便が多いため機体が小さく、搭載貨物の量が限定されるという状況があります。こちらに進出されている日系企業様の生産量は増加していますので、スペースの確保には非常に頭を悩ませています。

 

– それは大きな課題ですね。現在、空港も施設の拡張工事をしていますが、旅客数はともかく貨物に対しての機体の大きさは一般的に意識が向きにくい問題かもしれません。

 

直行便の運行が開始すれば日本との間で迅速に供給できるルートが増えることに加えて、日本を経由した欧米への輸送も可能になるというメリットが出てきます。物流の選択肢が増えますから、そういう意味でも日系航空会社様の進出は待ち望んでいます。当社はタイ・ベトナムへトラック輸送した後、当社タイ法人・ベトナム法人の手配で航空輸送する「トラック・アンド・エアーサービス」、或いはシンガポールへ航空輸送した後、当社シンガポール法人の手配で更に輸出するという「集約混載サービス」を提供しています。このような輸送方法で、近隣諸国のネットワークを駆使してカンボジアと世界を繋いでおります。

 

– 今後、カンボジアでビジネスをするにあたって展望・要望はありますか。改善を希望する点や、窮屈に思われる部分があればお聞かせください。

 

改善面は見えてきています。今までは通関で非常に時間がかかり、申告許可を取ることに一苦労でしたが、最近それが見受けられなくなってきました。以前と比較して、税関上層部からの指示が全体に浸透してきたように感じます。

もう一つ、タイ・カンボジア間の混載トラック輸送サービスを開始する際、国境のポイペト税関で打合せをしたところ、税関の方が「荷主様・物流会社の双方が日系企業であれば全く問題なく信用できますから、安心してビジネスを行ってください」とおっしゃったのです。これは非常にありがたいことで、日本という国の信頼度を改めて感じました。もちろん、日本の諸先輩方がこの地で積み重ねてくださった様々な実績の賜物です。だからこそ、カンボジアでグローバルスタンダードを提供するために我々が今できることを模索しながらビジネスに臨みたいと考えています。

カンボジアは間違いなく成長・発展を遂げるはずですから、あとはどの時点で誰が牽引するかですね。カンボジアの人たちは笑顔が素敵で非常に親日的ですが、スタッフ採用時に言葉のみならず考え方の違いを痛感しました。面接した物流経験者には、税関に親族がいるコネを利用しようとする方が数名おり、我々が目指す方向とは合致しないケースがありました。現在のスタッフは他業種経験者が多いですが、真面目で責任感が強く、我々がこの国でビジネスを行う目的・意義をしっかり理解してくれています。

 

– 特に今の若い方達は世界を見て、苦難の時代を乗り越えて変わろうとしています。彼らに適切な場を与えれば更に成長していきますから、ただ賃金が安いからという考え方は見直すべきですね。

 

恐らく、他国との比較も彼らは理解していると思います。自分達で何とかしないといけない、でも方法がわからないという時に、我々がお役に立つべきだと強く感じています。当社スタッフはバンコクで研修を受けましたが、半分以上が初めての外国での研修で、様々なことを学んで帰国しました。これからタイ以外の国にも出張したりプライベートで訪問したり、更にグローバルな人と触れ合う機会を作れば視野が広がり観念も変わるだろう、という話をスタッフとしています。これがモチベーションのひとつとなり、スタッフも日々頑張っています。

 

– カンボジア人スタッフでそこまで理解してくれるのは珍しいと言えますね。

 

我々の方法や理念を理解してくれるとこちらも力の注ぎ方が全く違いますが、何度も気持ちがすれ違う度に指導力不足を反省しています。そうやって各方面で相互理解が進めば、自ずとルールが出来上がってきます。育成には根気も必要ですが、共に成長する意識を持って接することで彼らがカンボジアの未来を牽引する力に繋がると信じています。