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カンボジアでIT革命を

BITEX (CAMBODIA) Co., Ltd.
マネージングダイレクター 成迫 真一さん

– カンボジアでの創業とその狙いについて教えてください。

 2年ほど前にカンボジア発で世界でも通用する開発会社を作る!と大上段に構えた目標を持って、カンボジアにきました。

– 実際に進出してみていかがでしたか?

 正直不満と期待が入り混じっています。まだまだ成長すべきところがある分、伸びしろがあるという事なんですが、具体的なスキル以前に開発者としての素地が整っていない印象があります。それ故に偏ったモノの見方をしていたり、一部の事が全部の事のように話したりする傾向が強いので、スタートアップの頃から根拠が明示されない情報や話は鵜呑みにしないように気を付けてきました。

– 採用活動は苦労しましたか?

 先ほど話したのと同様に、面接でも全ての話を鵜呑みにしないように心がけました。もちろん心の中での期待はありましたが、相手の本当の実力を見極められずに過度な期待をして採用してしまうと、お互いにとって不幸な結果を招きますから。
 その点からも、弊社は採用基準として、フレームワークを使った開発経験を重視しています。フレームワークを使うことで安定した品質の開発が出来ますから。その経験が無かったとしても過去の成果物を見せてもらいます。成果物には開発者として自分の作ったものを世に出したいという思いを感じる事が出来ます。開発者としてのやりがいや喜びを知っているのはとても重要ですね。

– 採用後の教育面はどうですか?

 まずは小さな事から、そしてスタッフ同士で自浄作用が働くようにしています。自ら発見し、自ら解決する。これを少しずつ底上げしてきました。なので弊社の場合、プロジェクトごとにチームリーダーがいて全ての仕事はチームリーダーに落とし込みます。その後、チームリーダーから開発担当者に落とし込みます。逆も然りで何かあれば必ずチームリーダーに報告が入ります。そうする事でたとえ問題が発生したり進捗が遅れたりしても、責任感を持って自ら解決してもらえるようになりました。
 また、この手法は開発プロジェクトに限った事ではありません。社内制度を決める時もこの手法であればカンボジア人スタッフの意見を取り入れられます。もちろん全ての意見が採用される訳ではありませんが、自分の意見が反映されると分かれば、問題意識を持って取り組み、発言をもするようになります。逆に何を言っても通らないと思うと、どんなに重大な問題を発見しても黙っています。これではお互いのためになりません。なので、小さな事からコツコツと協働関係を築くことが成長促進にも繋がりますね。

– 現在のカンボジアのIT業界について教えてください。

 カンボジアのIT業界は外資の参入も増え、成長著しいと思います。それ故にエンジニアの給与相場もうなぎ登りに上がっていますね。

– 優秀な人材を採用するのも難しくなっているんじゃないですか?

 確かにそうですね。でも先々を考えればカンボジアのIT業界が成長していく事の方が大事だと思っています。カンボジア人の中でITエンジニアは給料も高く待遇も良いということが浸透すれば、エンジニアを志す人も増えていきます。そしていろんな会社でいろんな開発に携わることは、とても良い成長材料になります。
 弊社は、日本をはじめとした先進国の開発会社をライバルと設定しています。安く発注できる単なるオフショア開発の拠点とは考えていません。今はどうしても安く開発できるという点がセールスポイントになっていますが、いずれは技術力がセールスポイントになるようにしていきたいと考えています。そういう点ではいくら採用が難しくなったとしてもカンボジアのIT業界が活発化する事は喜ばしいことです。

– この先カンボジア国内でIT業界が社会的地位を確立していく為には何が必要でしょうか?

 すでにある程度の地位は出来ていると思います。以前に学校でしか開発経験のない新卒の大学生を面接した際に、希望の初任給が600ドルでした。実際に600ドルに見合う見合わないではなく、希望した本人も相場やそれに対する自分の価値、将来性を勘案して希望してきた訳ですから、その感覚は社会的地位向上の現れだと思います。
 ただ、ここからさらに向上していくためには、もっとパソコンやスマートフォンが実生活に浸透していかなければなりません。例えば、スマートフォンの普及率は都心部では決して低くありません。しかしそのスマートフォンを何に使っているかといえば、大半がFacebookやゲーム、メッセンジャーでしょう。もっと生活の一つ一つがIT化しパソコンやスマートフォンを利用するシーンが増えれば、今までに無かったサービス需要が生まれます。その時にカンボジアで広く使われているアプリやサービスがカンボジア人の開発者によってカンボジアで作られているとなれば、カンボジアでのIT業界の社会的地位がより向上するでしょうね。

– それでは最後に今後5年後10年後のカンボジアのIT業界をどのように期待しますか?

 先ほども言った通り、日本はいろんな面でガラパゴスです。それ故に日本のサービスをそのまま海外に持ち出す難易度は高いです。しかし、カンボジアは言わば外資がIT業界をけん引していますので、文化的技術的な多様性に富み、そういう意味では日本のようなガラパゴス化する可能性は低いと思います。
 その利点を生かして、東南アジアのシリコンバレーになると期待しています。その為にも新たしいサービスやデバイスに触れ、今自分が使っているサービスや携わっている案件をただの作業として流していくのでなく、一つ一つに「なぜ?」という探求心を持って取り組んでもらいたいですね。既にカンボジア人エンジニアの中で開発は収入を得るための単なる労働ではなくなりつつありますので、今まさにパラダイムシフトが起き始めたと実感しています。

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