サイトアイコン 日系カンボジアニュースサイト プノンペンプレスネオ

絶滅危惧種のカワイルカを守る

農林水産省 水産局 リェン・サルーンさん

– カンボジアを流れるメコン河で見られる「カワイルカ」とはどのような生態なのでしょうか。

イラワディイルカという淡水イルカで、我々はメコンイルカと呼んでいます。クラチエ州のカンピー村からストゥントゥレン州までの流域、それとラオスとの国境で見られますが、実は国内の海にも生息しています。メコンイルカは水深10m以上のプールを中心に、6頭前後のグループを作ります。体長は最大約 2.75m、体重は約150kgで、頭が丸く、肌の色はグレーです。海に住むイルカと違って非常にシャイな性格で、人の近くにはあまり近寄ってきません。

– 絶滅危惧種に指定されていますが、 個体数の減少の理由は何でしょうか。また、現在はどのくらい生息しているのでしょうか。

メコンイルカは、約140年前から危機に瀕してきました。最初は1860年代、トンレサップ湖での漁業の工業化、そして1970年代は油をとるための乱獲です。報告されるイルカの主な死因は、刺し網や電流を流す違法漁業の被害、高速船からくる水質汚染によるものです。また中国やラオスなどメコン河の上流の環境の変化も影響します。世界自然保護基金(WWF)による2015年の報告では、80頭と観測されています。これはPhoto ID Mark Re-sightingという方法で調査されたものです。

– カンボジア政府はメコンイルカの保護についてどのような取り組みをしていますか。

農業水産省の中の水産局(FiA)が水生生物の調査や管理をしています。FiAはWWFと協力してメコンイルカの生態調査を行っています。保護のために一番大切なのは、メコンイルカの生態環境をなるべく自然に近い形で守る事です。我々は生息スポットに人間が近づきすぎないように保護地区を設けました。周辺住民にその場所を伝え、近くに網を仕掛けないよう指導し、違法漁業の取り締まりを強化しています。 水産局とWWFの協力の結果、ここ数年のメコンイルカの年間死亡数は数頭に抑えられています。もちろん今後のためにも活動資金を調達する事も必要です。近年、観光省によるクラチエでメコンイルカを見るエコツアーの人気が高まってきています。

– 日本では絶滅危惧種の繁殖に取り組んだり、管理下で飼育したりする取り組みがあります。それについてはいかがですか。

水族館のように捕獲して人工飼育する事はなく、あくまでメコンイルカの生態を自然と共に守る事が必要だと考えています。ここ10年ほどでクラチエへの観光客は数倍に増加し、地域の経済活性化にも貢献しています。しかしタイでは観光客がイルカに餌を与えたり、それが入っていた袋を海辺に捨てたりする問題も発生しているとの事です。クラゲを食べる習性もあるイルカは、水面のビニール袋を誤って食べてしまいます。カンボジアでメコンイルカの観光に来るのは、外国人の方やカンボジア人の若い世代です。メコンイルカの数を増やすため、そして淡水の生態系のためにも、餌は与えず静かに見守ってください。

モバイルバージョンを終了