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ソフトテニス発展のための孤独な闘い

カンボジア ソフトテニス ナショナルチーム
ヘッドコーチ 荻原 雅斗さん

– まずはカンボジアに来たきっかけから教えてください。

 もともと忍者という日本食レストランの立ち上げでカンボジアへ来ました。その後、僕が店長として新たにバーをオープンすることになりましたが、開業資金0円でスタートすることに。まったく社会人経験のない私が0からの立ち上げで、当時は服装や名刺の渡し方など何一つ知らず、いつもお客様に叱られてばかりいました。また、0円開業だったため、備品の購入すらできなく、知り合いに相談すると「もらえばいいじゃん」と言われ、そうだ!もらえばいいんだ!といろいろな所を駆け回って、もらえる物をかき集めました。しかし、バーですからお酒が必要ですが、お酒をもらう訳にはいきません。そこで業者に後払いにしてもらえるように交渉し、日本酒と焼酎だけは何とか後払いで仕入れることが出来るようになり、0円開業のたまりば(TAMARIBAR)がスタートしました。

– その後は順調でしたか?

 いえ、オープン当日はいろいろな知り合いの方が来てくださいましたが、0人の日は一度もなかったものの、2日目以降は本当に目も当てられない状況でした。お店は絆ストリートにあったのですが、今でこそ日系レストランで賑わっていますが、オープンした2013年当時の絆ストリートは真っ暗で、しかも工事中で毛沢東通り側からは入って来られませんでした。そのため、ノロドム通りから迂回して入ってこないといけなく、当時の立地条件は最悪でした。それでも0円開業を応援しようという方々の支えで、最終的には何とか単月黒字までは出すことができました。

– その後、どのような流れでソフトテニスの活動に繋がっていくのでしょうか?

 カンボジア人の知人を通して、硬式テニスをやられていた方と知り合い、そのカンボジア人の知人から「僕のプレイベン州の土地で一緒にテニスをやろう」というお誘いをいただき、そこで農村の子供たちに部活動として、テニスを広めようと始めたことがきっかけですね。その後、カンボジアオリンピック委員会の事務局長とお話する機会があり、事務局長から「2014年にソフトテニス連盟が出来ているが、何も活動が出来てなく教えられる人もいない。ソフトテニスをやっているのであれば連盟に顔を出してくれないか」とお話があり、実際に顔を出したところ、ナショナルチームのコーチの打診を受けました。

– 最初に練習に参加した時のチームの印象を教えてください。

 僕自身12年間ソフトテニスプレイヤーとしてやってきて、スポーツマンとはこういうものだというのがあったのですが、当時のカンボジア人選手はウォーミングアップすらやらないなど、それを全て覆すほどスポーツマンらしくなく、その辺の若い子がボロボロのコートでラケット持って遊んでいるような劣悪な環境でした。

– そんな状態で彼らはなぜソフトテニスをやっていたのでしょうか?

 彼らはポリスチームで在籍は警察にあり、彼らに与えられた仕事がソフトテニスだったという事です。ただ、結局目指すところもなく活動していたようです。

– そんな状態から一つずつ教えていく上での苦労があれば教えてください。

 先にお話した飲食店をやっていた時に、いろいろなスタッフを雇い、日本人とカンボジア人の違いを痛感し、日本の当り前が彼らにとっての当り前ではないことを知りました。そして、それをどちらに合せるのかを考えた時、どちらにも合わせられなく、双方のすり合わせをし、お互いが歩み寄れる中間点を見つける事が大事だと学び、当時はあぁした方が良い、こうした方が良いと言うのではなく、彼らはどう出てくるのだろうと様子を見るところから始めました。その結果、自分はこういう風にやっていると姿で見せていると、彼らが歩み寄ってきて、真似てやる部分とやらない部分とあり、歩み寄ってきた部分に関して僕もそれに合わせようという事で歩み寄ったという感じです。

– しかしウォーミングアップなどは理解できるかどうかに関わらず、やらせるべきではありませんか?

 ウォーミングアップは怪我をしないためや、パフォーマンスを上げるためにウォーミングアップをする訳ですが、当時の彼らはパフォーマンスを上げるとか、良いショットを打つという事は考えてなくて、ただソフトテニスを楽しくやるというのが彼らのスタイルでした。それに彼らが気付いたきっかけが、僕が国内の大会に出させてもらった時に、僕が勝ち彼らが負け、彼らは怪我をしたり足をつったりしているが、僕は足もつらなければケガもしない。その差は何かというとウォーミングアップだったり、試合の合間のストレッチだったりする訳です。それを彼らが痛感した時に初めて教えます。痛感する前に無理やりやらせても、その重要性を分かっていませんから。指示をしないとやらなかったりと意味がありません。このスタイルは今でも一貫していて、僕も練習には参加しますが、彼らから聞いてこない限りは僕から教えることはほとんどありません。

– そうすると歯がゆい思いも多いんじゃないですか?

 それは常にそうですね。国際大会に出場した時も、技術的には伸びてきてるんですが、それが結果に結びついていません。それは日々のモチベーションなど精神面が弱いだけで、それを僕がちゃんと教えられれば数年後にはライバルであるタイにも勝てるようになると思いますし、日本とだってやりあえるようになると思います。もし僕が何らかの理由でチームを離れなければいけなくなったとしても、彼らが自分たちで考えてプレーをすることが重要であり、僕がいなくては回らないチームでは意味がありません。この国ではカンボジア人である彼らが主役であり、あくまでも僕は裏方であるので、彼ら自身が自ら考えられるようになる為に、時間はかかりますが僕はあえて姿で見せて気付かせるようにしています。

– それでは最後にこれをきっかけにカンボジアのソフトテニスに興味を持った方々に魅力や注目の選手などを教えてください。

 ソフトテニスは実はボールが曲がったり跳ねなかったりなどの変化大きく、ダイナミックなプレーが多くみられる反面、実は心理戦でもあって、相手の性格が分かれば分かるほど試合は有利になります。短気なのか、我慢できるヤツなのかなどが分かるだけで、何となく打ってくるコースが分かってきます。そういう事を分かって見ると、なぜあのショットが決まったのか、なぜボールに触れたのかなどすべてが必然のように分析できるスポーツなので、より面白くなっていくと思います。注目選手はKan Sophornというまだ20歳の若い選手なんですが、2017年5月末から日本に半年間トレーニング合宿に参加する予定があり、とても有望な選手です。

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