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発展の陰に見え隠れする落とし穴。

 この時期は雨期という事もあり、思うように行動もできずイライラすることも多いが、その一方で一年の半分が過ぎ、法改正でルールが変わる中、やっと新しいやり方にもなれる時期だ。鉄道の更なる事業、各観光地までの高速道路、国境までの高速道路、9月のANA就航、130階建てのコンドミニアムの計画発表や着工等の大型事業など相変わらず発展のスピードが落ちないが、日常ここで生活をしていると、空気というか感覚的と言うかザワザワした気持ちが沸き上がってくる。
 日常的に流れるニュースや周りの出来事、知人たちとの雑談、役所や軍の人達との会食などで何かしっくりこない現状がある。竹ノ子のように次々と建つコンドミニアムの下では大雨で道が車数台を飲み込むほど大きく陥没したり、区画整理で沢山の沼地が埋め立てられた為に行き場を無くした雨があちらこちらで冠水したり、若者たちの犯罪増加や麻薬といった治安の低下。所得の格差や行き過ぎる開発、需要と供給のバランスの崩れ。丸いものに四角いものを押し込めようとしている感じだ。
 こうしてカンボジアで仕事をさせて貰っていて、言える立場ではないが資本や技術のパワーハラスメントとも取れる行いを、私達はしているのではないかという気持ちになる。表と裏が有るように、進歩をすれば追いつかない部分も出るし、便利になればその反面で不便に感じることも多くなる。今思い起こせば、カンボジアの子にご馳走をしようとしたら、「これから先も食べさせてくれるなら食べるが、そうでなければまた食べたくなったら辛いので、いつもの食事を食べよう」と言われた時に、「いつでも食べられるように頑張ろう」と言ってしまった。その時には気付かなかったが、そこには収入や仕事、家族や将来と言った様々な事が彼の中に構築出来ていない事を鑑みず、無責任な言葉を発した自分を今は恥ずかしく思う。この身勝手な言動こそが、無意識的に様々なギャップやパワーハラスメントを生み出し、最近感じる違和感に通じているのではないだろうか。
 巷に溢れる情報と実際の現場とのギャップ、伝えきれていないニュース、限られた時間の中でその国を知ることの難しさ、これだけ通信や交通が発達してもその距離はとても遠いものがある。
老舗の同業他社がリニューアルを兼ねて休刊を打ち出した。カンボジアに来たら皆必ずと言っていいほど持ち歩いていた雑誌が姿を消したことで、尚一層考えさせられる月である。

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