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理解と認識

 先月の過激派組織イスラム国による日本人拘束事件は、海外で働く私達も対岸の火事と見過ごすことの出来ない事件となった。また2月にはここプノンペンでも日本人に対して発砲事件が発生し、安全に対して今一度考えるべきだと思う。
 自分に直接降りかからないとなかなかピンとこない部分もあるが、以前に弊紙スタッフが腕にあざを作っており、よく見るとそれは人の指の跡だった。尋ねると道でバッグを盗られそうになり、その時腕を掴まれたのだと何事にも動じない彼女が教えてくれた。逆に見た方が恐怖心を抱き、平然と話す彼女に驚いた。
今回、日本人会会長に退任の取材の際に25年前カンボジアへ来られた当時の話を伺い、「犯罪は格差により発生し、そのギャップが人を歪めてしまう大きな要因だ」と仰っていたのがとても印象深かった。文化や習慣の違いから、私達が気付かないうちにその歪みと格差を生んでしまっているのは事実であろう。単純に賃金が安いから等の理由ではなく、お互いにビジネスパートナーとして、友人として接することでカンボジアの人々の信頼や理解を得ることができ、それが犯罪の抑止力の一つに成ればと思う。

 私が思うに、彼らの価値とその生活を認識しなければいけないと思う。物価が安いからと言いながらも、その生活を垣間見ることもローカル食を口にすることもないという外国人は決して少なくない。彼らも切り詰めながら頑張っているのを実感すれば、少しは気持ちも汲み取れるのではないだろうか。例えばこんな事があった。あるお菓子がとてもおいしいからとスタッフに勧めたら、「美味しいでしょうけど、私がまた食べたくなった時に買ってくれますか?もしまた食べる機会が無いなら、今食べなくてもいいです」と言う答えが返ってきた。ビックリしたのと同時に、安易に勧めた自分は答えに詰まり恥ずかしさすら覚えた。
 独りよがりの部分と言えば、クメール語・英語に疎い日本人は多い。にも関わらず、日本語がわかるカンボジアの人に対して早口や方言で一方的に伝え、相手がわからないと無理矢理にでもわからせようと連呼したり、諦めたりする光景を見ることがある。これもこちらの欺瞞で、相手にわかり易いように伝える努力はしない。言い換えるなら、こちらへのコミュニケーションのためにわざわざ日本語を話してくれる彼らに対しての敬意がないのではないか。こういった光景一つをとっても、何か履き違えている日本人というのは、長くこちらにいらっしゃる在住者の方からしたら滑稽に見えるのではないだろうか。

 近年、日本食やラーメン店のカンボジア進出は非常に増えている。いろいろなアプローチで出店されていると思うが、日本のように組合があるわけでもなく、日常のトラブルや相談事も「今」というときに困ることも多い。そろそろ皆で助け合い、発展していく組合組織が出来てもいい頃ではないかと思う。現地食材や環境にも慣れないうちにFacebookなどで評価され、次の対応を迫られているのを目にすることや、商売柄相談を持ち込まれることも希にある。アドバイザーも出店が一つのゴールとなっており、その後のフォローが行き届いているとは言い切れない現状がある。ご近所付き合いではないが、日本人の助け合い精神をそろそろ発揮する時期に来ているようだ。

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