//独占取材!! 日本人ツーリスト $6,000の詐欺被害

独占取材!! 日本人ツーリスト $6,000の詐欺被害

 旅先で詐欺や盗難事件の情報を良く見聞きするが、実際に自分に降りかかるとは思わず、その場限りで忘れる方が殆どだが、プノンペンのツーリストポリスに駆け込む日本人の数は、およそ2日に1人!警察官はカード詐欺だけでも今まで300件近い被害ではないかと、少しうんざりした面持ちで答えてくれた。暗記できるくらいに単純かつ同じ手口で、どうして日本人はこんなにも多く引っかかるのか不思議だとも付け加えた。

 今回の被害者は、今まで何カ国も海外勤務を経験し退職を機に1人旅を楽しもうと、プノンペンに立ち寄り独立記念塔近くで声を掛けられ、最後には$6,000盗られた。
 今回はその一部始終を紹介させていただく。

 被害者Aさん(以下Aさん)が独立記念塔近くを歩いていると突然女が英語で「日本人ですか?」と訪ねてきた。Aさんは日本語で「そうです。」と答えると女は日本語で「娘が来月に日本に行きます。でも娘は不安に思ってるので、家に来て娘に日本の事を話してやってくれないか?」当然Aさんは断ったが、何度もしつこくお願いしてくるので最後には根負けして了承してしまった。
 この時を振り返りAさんは異国の地で日本語で話しかけられたことで警戒心が薄れ、逆に親近感を覚えたという。

 待機していたと思われる男性のバイクで3人乗りをして連れて行かれた彼女の家は、生活感のある家で、食事の支度をしている娘の姿が目に入った。そのことで少し安堵し、丁度食事の支度が出来たから食べながら話をして欲しいと言われ、それがまたAさんの気持ちを緩ませてしまった。
 一通りの話が終わり食事も終わりかけた時に、隣の部屋から娘の祖父と名乗る老人が出てきて、話を聞かせてくれたお礼を言いながら、良かったら隣の部屋で友人たちとカードをやっているから、一緒にやらないかと誘われた。そんなに長居するつもりもなかったので断ったが、最初に声をかけてきた女性が2人でチームを組んでやるからルールが判らなくても、損させないからと半ば強引に席につかせカードゲームをやる事に成ってしまった。
 所持金を聞かれ$300をテーブルに出してしまった。これも後から考えれば軽率だったと思う。当初は面白いほど勝ち続けた。すると祖父の友人が「Aさんはとても強いので、このままでは取り返せない。だからレートを上げて勝負をしよう」と1万ドルを出してきた。当然そんな大金は持ってないと断ったが、またしても母親が「自分も出すので足りない分を出して欲しい」と言い、自宅でしかも家族も居て、友人たちもキャッシュで1万ドル出せるのだからよほど裕福な家庭で、金持ちはいつもこんなハイレートなギャンブルをやっているのかと思いつつも、足りない分を出すくらいなら良いかと受けてしまった。

 これが運命の分かれ道だった。ここまでは今までの勝ち分を返すからと言えば強引にでも帰れたかもしれない。しかし裕福な家庭の人たちが家族ぐるみで詐欺を働くなんて夢にも思っていなかった。
 結果はご想像の通り、レートが上がった瞬間からどんどん負け始め、まんまと相手の術中に嵌まってしまったことに気づくが時すでに遅し。わざわざホテルまでキャッシュカードを取りに行き、ATMに向かってしまった。
 しかしカードでお金を下ろせず早く逃げ出したい気持ちもあったAさんは、もうホテルに戻りたいと言ったが、母親はまったく聞く耳を持たず「友人のやっている宝石店が有るのでそこでクレジットカードで宝石を買い、それを私が現金で買い取ってやる」と宝石店に連れて行かれ、$6,000の宝石を買わされてしまった。

 そして一度元の家に戻ると母親が「お金は自宅にはない。私が経営している会社の金庫にあるので一緒に取りに行って欲しいとまた移動させらた。宝石を家に置いたまま母親の経営する会社が入居しているというビルに着くと、お金を取りに行ってくるのでここで少し待っててくれと言い残しそのビルに入って行った。
 待つこと10分。なかなか出て来ないので電話をすると、ついでに事務所の片付けをしているのでもう少し待ってくれとまた10分。さすがにおかしいと思い、近くにいたセキュリティーに彼女のオフィスを知っているか尋ねたが知らないとのこと。何度も電話をかけるがその電話に出る事は二度と無かった。
 結局どのフロアのどの部屋かも特定できず、元の家も不慣れな土地でいろんな所を連れ回されたこともあって覚えているはずもなく、Aさんは顔面蒼白でホテルに戻るしかなかった。

 そんな事件の翌日に私たちは偶然Aさんと出会った。とにかく大使館に行って事情を話し、ツーリストポリスで調書を作り、カード会社にも報告をしてと、やれることをやって怪我もなく金品の被害で終わったことを、せめてもの救いと慰めるしか無かったが、幸いにもカード会社の保険に入っていたため、手数料を引かれ損害金は補填されることになった事で気持ちにも多少の余裕ができ、今回のことを教訓として私たちに記事にしてもらうことで、同じ様な被害者が増えないようにして欲しいと今回の取材に至った。

 今回は記事はノンフィクションでリアルにお伝えしたことで、少しは読者の皆様の気持ちの中に残るのではないかと思います。こうして文章にすると、何カ所もおかしいと思う点や逃げるチャンスがあったと思いますが、その時は考える時間も与えられず、何人にも矢継ぎ早に喋られると思考力も落ちてしまい、恐怖心も相まって早く終わらせたいという気持ちすら有ったのかもしれません。
 ちなみにAさんは男性です。屈強とは言えないまでも決して気弱で軟弱なタイプではありません。しかしこれが現実なのです。
“知らない人には付いて行かない”
 大人が子供に言い聞かせることです。ほとんどの人は日本では出会った数分の人の家に招かれて付いて行くことはないでしょう。しかしそれが海外となると話は違ってくるのです。
 自分は大丈夫。そんな手に引っかかるわけない。と高を括らず他人事ではないと心に刻んで良い旅をして頂きたいと思います。