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先人の過ちを踏まえて、未来のビジョンを描く。

 ここカンボジアの経済は相変わらずの盛況ぶりだが、世界的に見ると5月のG7サミットでもその危機的状況を危惧する話題に尽き、日本も消費税の引き上げを2年半先送りする事が決定された。世界経済の需要が落ち込んでいる原因は、中国の失速とEUでの乱れが大きな要因と考えられる。専門家達がこの状況を分析し、状況打破を唱えているが、それは「成長」が前提ではないという意見が的を射ているように思う。成長を皮算用しながらの計画には確固たる論理もなく、結果の確実性も薄れる。GDPの数値で計るだけでなく、現在ならば環境問題・大気汚染などの将来的な不利益や、それに伴う高額な支出が発生しうる事も考慮する必要があるし、利益の矛先も見定めねばならないだろう。文明の高度化が進めば進むほど、消費を無制限の自由だと思い違い、それゆえにより一層極端な資本主義に走る構図は非常に怖いものがある。
 最近、中国ではインターネット金融が大きな伸びを見せている。投資家から、株価の暴落後の新たな投資先として人気が高まっているのだ。大手企業にしか融資を行わない銀行と違い、借り手側もスマートフォンで簡単に借り入れでき、農業や中小企業の新たな事業資金元として活用されている。中国政府も、従来の外的政策が低迷している今、内需拡大の1つの手段として後押ししているようにも見える。ネット金融を利用する若者へのインタビューでは、「親はコツコツとお金を貯めていたが、自分達の世代では考えられない」と言いながら、ものの10秒で約2万円を借り、ネイル・コスメ・洋服と買い漁っていた。借りる際に7%の利子を引かれるが、それでも安易に借金を重ねる姿に一抹の不安を抱いた。
 例えば、電車に求められるものは、より早く目的地に着くためのスピードだ。しかし、それが一番重要かというと決してそうではなく、安全に正確に運行する事が大前提だろう。昨今の世界経済を見ると、「安全」にあたる人々の暮らしをないがしろにし、「スピード」つまり急成長という過剰な手段を優先しすぎてきたように思う。今後はモノの売買だけを目的とせず、より根本的な生活の地盤や環境問題対策など地球規模での投資に舵を切らなければ、このトンネルは抜け出せないのではないだろうか。
 プノンペンに並ぶ建設中のコンドミニアムやオフィスビルを見ると、先述のような「将来の成長」を過信して転ばなければよいが・・・と心配してしまう。都市部の上辺の発展だけでなく、この国に必要なインフラ整備や教育、福祉等にもっと力を入れるべきだと日々痛感させられる。この国の魅力は、まだ未来を築けるという点にある。今なら先進国の過ちを繰り返さず、その先のより良い国になれる可能性があるという事を、財産と思って進んでほしい。

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