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コロナ禍で浮き彫りになる光と影

 カンボジアは日本に比べ感染者数は低く抑えられているものの、アンコールワットを有するシェムリアップをはじめとした観光都市の打撃は大きく、クメールタイムズ紙によればホテルやレストラン、旅行代理店など休業や廃業に追い込まれた事業者は1200社、失業者数は22000人に及ぶ。
 そんな状況に政府も指をくわえて見ているわけではなく、東南アジアの中でもいち早く渡航規制の緩和に舵を切り、航空会社への働きかけもあって便数も少しずつ増え始めていた。
 しかしそんなカンボジアの思惑に反して、原油価格の高騰が航空券代にも影響したことで観光客の足を鈍らせた。
 そしてカンボジアは観光客がコロナ前の水準に戻るまでもうしばらく内需だけで乗り越えなければならない状況となった。
 実際にコロナの影響を受けているのは観光業だけでない。カンボジアでは日本のような事業者に対する給付金や補助金は無く自力で乗り越えなければならない上に、日本と違いカンボジア政府はロックダウンや営業禁止などの強力なコロナ対策措置を取ることができるため、政府の方針一つで事業や生活の明暗が大きく分かれてしまう。そのため国民や私たち在住者は政府の方針に身を委ねるしかなかった。当然私たち在住者は嫌なら帰国すれば良いだけの話だが、ほとんどのカンボジア国民はそうはいかない。
 しかし結果としてカンボジア政府の対策は成功したと言って良いだろう。ロックダウンや営業禁止措置も当時は先が見えずに不安が募ったが、結果的には過度に対策を講じることもなく必要最小限で乗り越えた。
 今では街中でマスクをつけている人の方が少なく、病院などの一部の施設を除いてアルコール消毒すらしなくなった。実際にカンボジアで生活していると世界ではいまだにコロナ禍という実感はまったく湧かない。
 そんな政府の対策の甲斐あってか、コロナ需要とはまったく関係ない事業でも業績を伸ばしている企業は存在する。
 私の知人の会社ではプノンペンとシェムリアップにホテルを5つ経営しており、毎月500万以上の赤字を垂れ流していると言っていたが、その数日後にはプノンペンの1カ所のみ残し他の4つは全て閉鎖したそうだ。
 それだけであれば特筆すべきところは何も無いのだが、彼はホテルを閉鎖した分、以前より進めていた地方での分譲リゾート施設事業にさまざまなリソースを集中させ、見事に成功させた。
 そして今では新車を2台も購入している。つい数ヶ月前まで毎月500万の赤字に頭を抱えていたのにである。しかも彼だけが特別なのではなく、私の周りだけでもこのコロナ禍で新車に買い替えたカンボジア人は何人かいる。しかも皆ベンツなどの高級車である。
 これには日本人も脱帽せざるを得ない。そして、先進国だから日本人だからカンボジア人よりも経営センスが優っているという思い込みは捨てるべきだろう。
 もちろんカンボジア国内での話なのでカンボジア人に分があることは間違いないし、私の周りという一面を切り取っただけにすぎないかもしれないが、それを差し引いても余りあるだけの能力を彼らは持っており、多くの日本人の頭の中にあるカンボジア人像と現実のカンボジア人の乖離があることを私たち日本人は認めなければならない。
 カンボジアが先進国の仲間入りを果たすにはまだまだ時間が必要だが、今回のコロナ禍で垣間見たカンボジアの政財界の底力はもはや日本以上と言っても過言ではないとさえ思う。
 カンボジアをはじめとした東南アジアへの進出を検討している企業はまず、先進国然とした考えを捨てるところから始めることをおすすめする。

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